- 2010年7月14日 12:49 AM
- 同人
同人誌即売会、というものが昔と比べれば確実に変容しつつあるよなぁ……という話です。
同人誌即売会というイベントの端緒は言うまでもなくコミケだろう。
間違いなく今まで開かれてきた同人誌即売会の中で最も歴史が長く、そして知名度も高い。
オタクでなくても名前ぐらいは知っているという人はよく見かける。
そしてそもそもコミケというイベント自体がその歴史の中で大きく変容してきたことをまず振り返る必要があるだろう。
初期のコミケは人数が少なかったのはもちろんだが、
出展しているサークルはいわゆる学漫が多かった。
同人で利益を上げるなんてことは考えられなかったし、また今ほどオタク文化と密接だったわけでもない。
単なる自分の作品を公開しながらついでに販売する場所に過ぎなかったのである。
それから約35年。
同人という世界はもはやひとつの「文化」を形成するに至った。
東方はその最たる例であろう。
同人に端を発し、同人の世界で急激に拡散した後、いまや同人以外の領域にまで影響を及ぼしている。
オタク文化の中で激甚な影響を持つに至ったのである。
同人が文化を形成する過程で、同時に「市場」の形成が進んだ。
「コミックマーケット」は文字とおり経済学的にも立派な「マーケット」へと成長したのである。
同人世界における市場経済を促進したのは、同人ショップの登場であろう。
それまで個人の資本に頼り切っていた同人世界の拡大は、同人ショップによる法人資本の投下によって
一挙に拡大を速めていった。
同人は商売である、というと異論が出るかもしれないが
すでに同人サークルと読み手の間で執り行なわれているのは立派な売買契約であるし、
同人ショップと客の間で行われているのもやはりそれである。
一部のサークルにいたっては、所得税の問題が発生するほどに莫大な金額を動かすに至っている。
同人の初期に立ち返れば、一応本の販売は行っていたとはいえそれは市場を形成するには至らず
あくまで個人取引に毛が生えた程度であった。
到底他の経済主体に影響を与えるなど考えられもしなかったのである。
このように同人世界はコミケというひとつのイベントをとってみても
経済的、かつ文化的な成長を遂げた、ということが言えるだろう。
ここでコミケ以外のイベントに目を向けてみよう。
同人世界において活動の主体を担うのは今も昔も同人誌即売会であるが、
その数はコミケの誕生以来拡大を続けている。
コミケと同じくあらゆるジャンルを取り扱うイベントが大規模な連休を埋めるように開かれるようになり、
また小規模な特定ジャンルに特化したイベントもやがてカレンダーの休日を埋め尽くしていった。
今や毎週どこかで同人誌即売会が数個は開かれている、というのが実情である。
先程述べた同人世界の拡張がこの同人誌即売会の拡張によって促されたのは事実であろう。
同人ショップなど他の要因はあれど、やはり同人世界の拡張に一番大きな役割を果たしたのは
あらゆるジャンルのニーズを満たし、あらゆる創作者の創作欲にフィットし、
そしてあらゆる読み手の需要に応えるべく規模を拡大し、数を増やし続けてきた同人誌即売会そのものであろう。
そういった意味で、同人誌即売会の拡張こそが同人の拡張の歴史であったといっても過言ではなかろう。
一方で、同人誌即売会はここに来て今まで想像できなかった新たな要素をはらみつつある。
コミケは毎年徐々にではあるが今も規模を拡大し続けており、参加人数は増えている。
結果として室内で開かれるイベントとしてはもはや異常とも言える状態になっている。
大げさにいってしまえば、今まで人類はここまで巨大な室内イベントに遭遇したことはないのである。
それ故問題も噴出する。
キャパシティの問題、人気サークルの競争率上昇に伴うサクチケ転売の横行。
またコミケは単に人数だけではなく、年齢層まで拡大しつつある。
小学生や中学生と思しき人達をコミケ会場で見かけることは珍しくなくなった。
では、すべての同人誌即売会がこのような問題を持っているのかというと決してそうではない。
コミケとは逆に小規模なイベントに目を向けてみよう。
小規模なイベントは主にオンリーイベントが中心となってくるが、
際限なく拡大していくかに思えた需要に合わせるようにして、これらオンリーイベントの数は今まで増え続けてきた。
数ばかりが増えた結果ごく小規模なオンリーイベントが無数に乱立するようになってしまった、というのが現状である。
尤もそんな小規模イベントの世界においては大規模イベントには見られない特徴がある。
おそらく世界初であろう、神社で開かれる同人誌即売会である。
こういった試みは、大規模イベントには不可能な試みである。
小規模故に小回りがきく、斬新な試みを実行にうつすことができる。
これはかなり大きな利点であろう。
小規模イベントは確かに乱立気味で、今後少々の数の調整は起こる可能性はあるが、
上に挙げたものを含む特有の利点を持っている以上、ある程度のところで小規模イベントは勢力を保つことだろう。
規模という切り口から、同人誌即売会を大きく二つに割って考えてみたが、
私自身はこの二つをもはや同じものと考えるのには無理があるのではないかと思っている。
大規模イベントはもはや「市場」であり、そこで行われている行為は(特に大手サークルに限ってみれば)立派な商売であろう。
その集客力(客という言葉は不適切かもしれないが)故に、他の主体に与える影響も激甚である。
一方で小規模イベントは、数においては大規模イベントを圧倒しており、それ故一定勢力は持っているが、
「市場」というよりは「コミュニティ」と呼ぶ方が現状にあっており、
また、他の主体に与える文化的影響もそれほど大きいわけではない。
単に「同人作品を売買する」という共通点だけを残してもはや即売会は規模という観点から見て
全く性格を異にする二つのカテゴリにわかれてしまったようである。
すなわち「同人誌即売会」とこの手のイベントをひとくくりにしてしまうこと自体にも若干無理が生じているとも言えるだろう。
このカテゴリの拡散は、同人世界の拡大によってもたらされたものである。
現在進んでいる急激なオタク層のライト化および拡張、そしてオタクそのものの定義の変容に伴って
同人世界も今まで以上に大きな変容を今後するだろう。
それに合わせる形で、即売会自体もまた今まで以上に大きく変容する、そんな気がする次第である。
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